「親が薄毛だから、自分も将来ハゲるのではないか」。多くの男性が、一度は抱いたことのある不安ではないでしょうか。そして、残念ながら、この不安は単なる杞憂ではなく、科学的な根拠に基づいた事実である可能性が高いのです。薄毛、特に男性の薄毛の9割以上を占めるAGA(男性型脱毛症)の発症には、「遺伝的素因」が極めて強く関与していることが、数多くの研究によって明らかになっています。AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによって、より強力な脱毛ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、このDHTが毛根にある男性ホルモン受容体と結合することで進行します。このプロセスにおける二つの重要な要素、すなわち「5αリダクターゼの活性度の高さ」と「男性ホルモン受容体の感受性の高さ」が、親から子へと遺伝するのです。つまり、DHTを生成しやすい体質と、DHTの影響を受けやすい体質の両方が、遺伝によって受け継がれる可能性があるということです。これは、生まれつきお酒に強い人と弱い人がいるのと同じように、体質的な「なりやすさ」の問題であり、本人の努力や生活習慣だけでは、抗うことが難しい側面を持っています。もちろん、遺伝的な素因を持つ人が、必ずしも100%薄毛になるわけではありません。しかし、そのリスクを抱えていることは紛れもない事実です。この切っても切れない関係を正しく理解することは、いたずらに運命を悲観するためではありません。むしろ、自分にそのリスクがあることを早期に認識し、他の人よりも早く、そして意識的に予防や対策を始めるための、重要なアドバンテージを得ることなのです。遺伝は、変えることのできない設計図かもしれませんが、その設計図をどう読み解き、どう対処していくかは、あなた自身の選択に委ねられているのです。
薄毛と遺伝切っても切れないその関係