長年、髪の悩みに向き合う毛髪診断士として、お客様から最も多くいただくのが「この薄毛、本当に治りますか?」という、切実なご質問です。私はいつも、こうお答えすることから始めています。「原因によります。そして、『治る』という言葉をどう捉えるかによりますが、改善の可能性は十分にありますよ」と。まず大前提として、薄毛と一言で言っても、その原因は様々です。例えば、急激なダイエットによる栄養失調や、強いストレスが引き金となる休止期脱毛症であれば、その原因を取り除き、生活習慣を整えることで、数ヶ月から一年程度で自然に回復する、つまり「治る」ケースがほとんどです。この場合、薄毛は体からの危険信号であり、生活を見直す良い機会と捉えることができます。一方で、ご相談の多くを占めるAGA(男性型脱毛症)の場合は、話が少し異なります。AGAは遺伝とホルモンが関わる進行性の症状なので、放置すればゆっくりと、しかし確実に進行していきます。そして、現代の医学では、この体質自体を完全に「完治」させることはできません。しかし、だからといって諦める必要は全くありません。適切な治療、例えば専門クリニックで処方される内服薬や外用薬を用いれば、その進行を食い止め、ヘアサイクルを正常に近づけることで、見た目を大きく「改善」させることが可能です。細く弱ってしまった髪が太く力強さを取り戻し、全体的なボリュームがアップすれば、それはご本人にとって「治った」と実感できるほどの変化になり得ます。よく、「治療はいつまで続ければいいですか?」と聞かれますが、AGAの場合、治療はマラソンのようなものです。薬をやめれば、抑制されていたAGAの原因が再び活性化し、髪は元の状態に戻ろうとします。ですから、改善した状態を維持するためには、治療の継続が必要になります。薄毛は、一人で抱え込んで悩む時代は終わりました。原因を正しく突き止め、専門家と相談しながら、自分に合ったアプローチを見つけること。それが、暗いトンネルから抜け出し、「治る」という希望の光を見つけるための、最も確実な一歩なのです。